見えなければ忘れ去られる2020/10/25 08:31

あっという間に秋が来て、夏の海も、トアエモアの歌のように「もう誰もいない海」になってしまっているでしょう。

季節の移り変わりは早いものですが、
最近、「見えなければ忘れ去られる」という、言葉にも
人の世の移り変わりを深く感じ入ることがあります。

英語では「OUT OF SIGHT OUT OF MIND」という諺ですが、
通常、日本語では「去る者は日々に疎し」と翻訳されますが、
なにか、直訳のほうがすっきり入ってきます。

NHK教育テレビで放映している 滝沢直樹氏の「漫勉」という番組があります。
この番組は、日本の著名な漫画家に焦点を定め、漫画家の仕事場に入り込んで、彼らの漫画のテクニックや創作の秘密を探る番組です。

この番組を時たま見るのですが、先週10月22日に放送された、
「星野之宜」氏のテクニックや発想法、その原点の彼の蔵書庫を、惜しげもなく公開していただき圧倒されました。

一時期、建築の設計を生業としてきたものにとって、業種は違いますが、
まさに、手を動かして作品をつくるという原点は一緒ですので、彼の技量やアナログ的な手法に圧倒されました。

また、彼を支える、1万冊余の蔵書に裏づかれた思考や、発想の原点を見せてもらったことはよかったです。

ものを作る原点は、やはり時代が進んでも、アナログであることを感じました。

なんでも電子化されてきましたが、電子化された本や写真は、記憶に残らないし、すぐ忘れ去られてしまうことを感じます。

コロナ禍の世の中になり、リモートと言って、ますます資料や報告が電子化され、アナログ的なものが、効率が悪いと排除されてきました。

非常に殺伐となってきて、小説以外の本、漫画もそうですが、努めて
電子本でなく、印刷された本を買うようになりました。

本のぬくもり、作者の熱い注力されたエネルギーは、手に取って、触って、書き込んで、眺めて、繰り返し開いて感じるのが良いと感じております。
好きなものを身近において暮らす。蔵書に埋もれて暮らす。
現代では、最高の贅沢になってしまいました。

見えなければ、すぐ忘れ去られてしまいます。