驚愕 40年の活動2016/09/19 10:57

日本橋高島屋で、「こと亀展」を行っている情報を得ていたのですが、
日本経済新聞でも、ものすごい人で溢れかえって長蛇の列だと掲載記事に書いてありました。

秋本治氏の描く漫画は、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」という名称で、愛称として「こち亀」として親しまれた漫画です。

私は、大の漫画好きでありますが、1976年の連載開始の頃は、主人公の[両津勘吉]の絵は荒く、読んでいなかったのですが、現在の両津の顔になってからは、毎週のように楽しみでした。

その卓越たる描写とテンポ、ギャグの秀逸さ、下町の中に移り変わる時代を捉えたこの漫画は、いつの間にかロングセラーとなっていったのですが、こちらの興味は,
年とともに、移り変わり、いつの間にか読まなくなっていました。

私の大学卒業から始まった漫画が、実に40年も続いたことに対する驚きで、つい足が日本橋へと向いてしまいました。

土曜日の夕方に行ったので、もう混んでいないだろうと思っていましたが、
店の定員さんが、「混雑が一段落しましたよ!」と言ってましたが、それでも予想以上の人でごったがえしており、入場しても、3万枚余の中から厳選された漫画のどの原画のまえからも、人がちっとも動かないし、動けない状態でした。

漫画では、到底わからなかったことですが、オートバイにしても、下町の風景にしても、徹底して写真取材をしており、忠実に、それを漫画で再現しておりました。

たった1ページの、その中のまた一コマを描くのに、ここまでこだわって描いておられてのかとわかったときに、その病的なまでの執念。
表現しようという気迫に圧倒されました。

日本の産んだ漫画、アニメというメディアが、現在世界に浸透して、漫画は子供のものから、大人のもの、他の芸術に匹敵するものであると認識されました。

これは、漫画を通して、ファッション、日本の喜怒哀楽、食事、物の考え方など、すべてを含んだ文化、文明として、日本というものが世界に発信され、漫画を通して、日本の良さが、文化の奥深さ、一元的に捉えられない複雑で面白い日本風土などが認識されています。

このアニメを通して、日本が認識されて来たことは、純粋に好きだから、損得なしで続けてきた、手塚治虫を筆頭とする漫画家を輩出した「トキワ荘」を代表とする、職人気質の日本人の性(さが)その物のなせる技で、この秋本修氏も、手塚氏と並んで、世界を引っ張ってきた筆頭の漫画家たる人だと思いました。

「漫画は漫画、されど漫画」で、漫画と聞いただけで、唾棄するほど嫌厭する人、小説やオペラや絵画と同列に、見なす事ができない人がいます。

この傾向は、特にアメリカでは激しいもので、宗教の影響もあり、ダーティブックとして扱われ、大人が漫画を読んでいる時点で、成熟した大人とみなされないようです。

グーテンベルグの印刷技術からはじまった、文字に書いたものがとても貴重であった時代の、本は高貴とする、古い因習や考え方、
一方、メロディー、和声、リズムが厳選と定まっているクラシック音楽が高貴とする、いまだに現代に抜けきれない音楽愛好者、
印象派までを、美術として、いまだに、2次元のキャンバスに、3次元も4次元も表現しようとする、キュビニズム以降の美術がわからない人のように、
凝り固まった頭、理性で理解しようとする人には、漫画はなかなか同列には扱ってもらえません。

しかし、宮﨑駿氏が出現したり、ポケモンが浸透したり、徐々にその世界が認識されて来たことは嬉しい限りです。

古くは、鳥獣戯画や、源氏物語絵巻に代表されるように、
江戸時代には、浮世絵、とくに歌川国芳に代表される、とんち絵など、
かくも楽しげで、愉快なるものを、日ノ本の人々は、太古よりかような物を好んできた古い歴史があります。

ヨーロッパを旅行しても、古い時代の絵には、楽しいものが、ほとんどありません。
戦争絵が、宗教画などが殆どで、太古より楽しげで愉快なるものへの追求はなされていません。

40年という歳月を、ずっと同じ作品を作り続けたそのエネルギーは、単に好きだからは続けられません。
ましてや、お金目的では絶対にありえないことです。

楽しげで、愉快なるものを追求してやまない、描かずにはいられない気持ちが織り成せる業であったと思われます。

西欧化して、なんでも金になるものが良いとする風潮、楽して儲けようとする風潮中で、
日本人の魂、自分の手で地道に、楽しげで愉快なるものを追求してくれる、若い人が、秋元氏に続いてくれることを願っています。

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